【書評】田辺聖子『開き直り』
こんばんは!LINEだと何故か人とうまく話せないultraseamlessですよ。
お元気ですか。
田辺聖子さんの『開き直り』という物語を読みました。
記事中の引用もとは、田辺聖子著『ブス愚痴録』1992,文春文庫より。
う〜〜ん、どことなく香る昭和の人間くささよ..。
【あらすじ】
主人公は40過ぎのおじさんである、田代。結婚した妻幸子は、不平不満が絶えず、何を見ても何を聞いても悪口を言わずにはいられない性格である。
そんな性格とも知らず、田代は美人でほっそりとして、しかも、自信を感じさせるたたずまいな惚れ猛烈アピールをし結婚するが、二ヶ月後に
とてもではないが、人間と一緒に暮らせないヒステリーお化けだということに気づく。
田代の親族と会おうとも挨拶もせず、ふと田代が優しく声をかければ、憎むような言い方でたたみかけてくる。
田代の実家では、男は女に声を荒げたり暴力をふるうなんてことはなく、優しく思いやりをもって接し合う家庭だった。
しかし、そもそもの、タイプが全く違うのだと気づく。
しかし、その後子供がうまれ、その溝は埋まらないままに20年ほどがたった。
ある夏に一家は海へいくことになった。
そこで出会った若いアルバイトの、リイ子に田代は惹かれる。
そしてリイ子のマンションに通ったり、電話をしたりして、妻からの攻撃に耐えていたが、リイ子の親から電話があり、別れて欲しいと言われる。実はりいこは、17歳の高校生だったのである。
現実に引き戻された田代はりいこから距離をとるが、正月に、なんとりいこが家に来てしまう。
しかしそれを招き入れた娘たちは、彼女と仲良くなり、そして父である田代と愛人関係であることも推測しあったりする。そんな訳で事情をうっすら把握した娘は妻への口止め料としてお年玉に割り増しをおねだりする、、。
【書評】
男オバン。
禿を気にしてるとか、おなか出てるのに、ベルトをぎりぎり締めてるとか、くたびれた服とか、ネズミ色のハンケチとか、肩はフケだらけとか、お茶飲んでズウズウ音立て、楊枝くわえてシーハーとエレベーターに乗るとか、一日中、湯煎場でガラガラペーペーいうとか•••そういうのが男オバンです
だそうだ。それが、会社の中でミドルエイジに対するアダ名だと。
でもその中でも田代にはフレッシュさがある!という。それには、リイコという存在があったからこそなのであった、、。
読んでいて、『なんか人間くさくていいなぁ〜〜っ』と思ったフレーズが
妻との生活を振り返っているシーン。
子供が生まれ、そうすると、どうやら会話も多くなった。妻の譴責口調の意地悪さは変わらないが、田代も馴れてきた。馴れというのは離婚のキッカケを失わせる、と田代は思う。妻のいうように、世間の夫婦はみな、こんなものであろうか。妻はそう思って澄ましているかもしれない側、田代は(納得しがたい)のだ。
納得しがたいまま20年近く暮らして、妻の断定一喝にいつのまにかなれ、鼻唄なんか絶えて唄うこともなかったのに、フト、鼻唄の出てくる、(今日この頃でございます)と田代は漫才師のように胸のうちでいう。
このシーンがなんとも。好きです。この後に演歌を口ずさむんですけど。
なんか、本当に奥の奥まで陽気なひとだな〜というか面白いな〜と思いました。
クスクス笑ってしまうような。
あ〜こんなひとがええなぁ〜という感じであります。
結婚するお相手とは、同棲して付き合ってから結婚というのがいいよなぁと思いました。
まぁどうなるかは分からないのですが。
主人公の田代さんは、何はともあれ、面白い大阪のおっちゃんなんだな〜という感じで、
なんだか読んでいて楽しかったです。
おっちゃんと一緒に真夏の恋を疑似体験してみませんか?
おすすめの物語です(*^_^*)!