ultraseamless’s diary

読んだ本の感想を書いたり、日々のことをつらつらと。

田辺聖子『ここだけの女の話』

こんばんは。

こんな夜中に田辺聖子さんの、しかも恋愛ものの短編を、読むんじゃなかったと悔やんでいるultraseamlessです。

あーぁ、元彼との黒歴史が、思い出されて、ろくに寝付けそうにありません。でも今日は朝井リョウさんと加藤千恵さんのラジオがあるから、それでもいいかな。
なんて思う今日この頃です。

はい、今回は!田辺聖子さんの『ここだけの女の話』という本を紹介します。

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田辺聖子さんの本に出てくる人の言葉や情景って、すごくリアルで、本を読んでることも忘れて、その生活の中に自分も入ってしまった気分になるので不思議です。
自分もその茶の間で目撃してしまってる感じ。
それだけに、自分の過去の記憶も引きずり出されて、読み終わった後にじんじん痛むような感じがあるのですが。

まぁそれは個人的体験なので、いいとして。

読んだ感想を書いてみようと思います。

とにかく声を出して笑わずにはいられない。

この本、30ページ位の短編を集めたものなのですが、一番はじめにある『シーソー夫婦』というお話が面白くてたまらないのです。

あらすじとしては、
主人公は30代のサラリーマンの男が、うっかりエアコンの涼しさ目当てで入ってしまった公民館の一室で、偶然短歌講座が開かれてる中に参加してしまい、
短歌や俳句のことなどよく知らないのに、順番に自分の好きな俳句を発表しなければならないことになってしまい…
そこで、「僕」は『人間至高の愛などありや一日労働の果てをただねむりゆく』という歌をあげ、
妻とのけったいな、日々の生活が、
いかに自分に、その歌を詠わしめるか、短歌講座の受講生に説明し始める。

もうこの時点でおもろい。
そもそも、クーラー目当てで入った会議室とかでたまたま短歌講座してて、しかも運悪く「お好きな短歌は?俳人は?」
と聞かれる流れになって。
そこで、打ち明けられる「すみません実は別に俳句にも短歌にももともと興味ありませんクーラー目当てでした」という内容を発言。

でもなンや、申し訳ないから、新聞の短歌の欄で見つけたものを挙げましてそれに共感した、妻とのエピソードを告白してこの場で挨拶と変えたいと思います。
と、トントンと幕が上がっていく。

この「僕」の話を地域のおじーちゃんおばーちゃんがポカーンと聞いてる。

なんじゃそりゃーッ!!
というツッコミもなにもなく、話は始まる。

では、登場人物の設定と、話の中のエピソードをひとつ。
「僕」は出張が多いサラリーマン、妻はデパートのベビー用品の販売員。休みも被らず、ろくに顔を合わせない日々が続いていた。それでも、たまに時間が合う日には、ゆったり二人の時間を楽しみたいのに、どうにもうまくいかない。

ある日、
早めに帰るからと言った妻のために、自分も早くに帰ってきた。
心もうきうき、団地の階段を三つあがり、ビーとブザーを鳴らしたが出てくるべきものが出て来ぬ。•••案の如く誰もいない、無人。無人の室。この無人の室というヤツ、人間に哲学を強いるものである。
つまり、人は何のために生きておるのか。男と女は何のために結婚するのか。誰か、答えられたら答えてみい。晩夏のムウと暑い、閉め切ったる部屋の中へですな、無人の静寂の中へ一歩、足をふみこんだときに、その答えがぱっと出て来たら、えらいわ。しかし僕はいつもの哲学はやりません。今日はべつだからです。今日は何となく心たのしく、気にハリがあり、どりゃ、相棒が帰るまでに、きれいに片づけといてやろうという気がある。

しかし、当の妻がいない。

妻は残業だったことを謝るが、「僕」はツンとしてブーたれる。そんなこんなで、ケンカまで始まってしまう。
僕としては、ひとりぼっちで淋しく待たされてる、バカみたいな時間が、もう、何ともやりきれんのですわ。•••僕はもう、無人の部屋の哲学もスリルも願い下げにしたい心境です。好きな彼女にいつも傍にいてほしい、いや、そうもいわない、せめて女房の顔をおぼえるだけの時間は与えてほしいと思うだけです。それが、まわりまわってですな、ふくれっつらになるのですわ。

さてさて、二人はお互いのことを好いてるのにどうにも、空回ってばかり。

一体どんなオチが•••?!

【感想】

いや〜、コントを間近で見てるような気分になります。田辺聖子さんの小説を読んでると。

声出して笑っちゃう本って中々読んだことないです。でもこの本を読んでると簡単に笑っちゃう。

なんだか、当の本人達からしたら、心地悪いのかもしれないのですが、こう小説で心境や場面を覗いてみると、本当漫才を見てるようで、ケラケラ笑い飛ばせちゃう。

悩みってそんなもんなのかもなぁ、と笑いながら思いました。


【まとめ】

悪いことをしたな、と思ったら、マズ謝る